ハートリンク放課後等デイサービス本郷台《SST:意見の受信/発信》
私たちは、自分の考え、気持ち、意見を伝えるために「言葉」を用いることが多いですが、「言葉にならない」という言葉がある通り、どうもうまく伝えられない瞬間というのがありますよね。自分の語彙の引き出しをどんなにひっくり返しても、伝えたいことを的確に伝える言葉が見つからない瞬間です。
そういう、「言葉にならない」ものほど大切なことだったり、伝えたいことだったり、心を動かされたものだったりするのだから、言葉と言うのはあくまで自己表現のための道具の一種であり、便利だから学習し身に着けて使用しているだけで、決して完全な存在ではないのだと実感します。
さて、関係があるのかないのか微妙なところですが、本日のお話は先日水曜日、《SST》がターゲットの日取り組んだ「話し合い」に関する活動についてです。①狙いと課題設定②取り組みの様子③結果、の順で、今回もご報告させていただければと思います。
①狙いと課題設定
まずは《SST》という言葉について。これは今までにも何度かお伝えしましたが、《ソーシャルスキルトレーニング》の略です。社会生活に必要なスキルを身に着ける練習、とざっくりですがそういう意味があります。
ただ、これはとても定義が広く、お子様それぞれ獲得するべきスキルが違うため、例えばあの子には「身だしなみ」のスキル、この子には「ありがとうとごめんねを表出する」スキル、この子には「複数指示の理解」スキル、と方向性が大きく違うターゲットで行うと、もちろん個別の場ではそれぞれ最優先するべきことから取り組みますが、集団活動の場では収集が付かなくなってしまいます。なので、ターゲットを絞って集団の狙いとして設定する必要があります。
ハートリンク本郷台では月曜日と水曜日がSSTの曜日となっているのですが、それぞれの曜日にくるお子様たちの様子から、月曜日は《ルール・指示理解》、水曜日は《意見の受信/発信、気持ちの表出》とターゲットを設定し、継続して取り組んでいくこととしました。
今回の《話し合い》は、水曜日なので《意見の受信/発信、気持ちの表出》の中から《意見の受信/発信》の部分に注目して行いました。
さて、何を題材に話し合いをしましょう?
「~を話し合って考えます」と、《話し合い》自体を目的にした課題にすると、あまり面白みがないような気がします。なので、《話し合い》はあくまで手段である、という課題にするため、5~6人程度の班に分かれ、それぞれの班で《話し合って遊びを決める》ということにしました。
しかし話し合い、とは言ってみたものの、とても難しい活動のように聞こえませんか?話し合いという行為に絶対的な正解はありませんが、おそらく大多数が想像するであろう話し合いに必要なスキルを挙げてみます。
大まかに挙げましたが、これだけでもたくさんのスキルが必要そうです。そしてこれらのスキルも、ひとつずつ見ていくとさらに細かく分かれていきます。大人にでも全てを的確に行うのは難しいですよね。
今回はあくまでも、《自分の意見を伝える(意見の発信)》《相手の話を聞く・質問する(意見の受信)》部分にターゲットを絞り、行っていきます。
①「~で遊びたい」と伝える
②「なにやりたい?」と聞く
③決まらなかったらじゃんけんで決める
この3つを、今回のルールとしました。
何もない状態から「何で遊びたいか」を自分で思い浮かべるのが難しい場合、「わからない」と、意見の発信の機会を逃してしまうかもしれません。なので選択肢を用意し、「この中からみんなで遊ぶものを2つ決めるよ」「ほかにやりたいことがある人はそれを言っていいよ」と提示をして、意見の《表出》と《選択》で、自分のレベルに合わせて伝え方を選べるようにしました。
②取り組みの様子
まずは、この課題の提示方法です。
ルール①とルール②、それぞれについていい例と悪い例を動画で撮り、タブレットでみんなに見せて《モデリング》を行いました。「何がよくなかったと思う?」と聞いて話し合いの方法について考えてもらい、お子様から引き出したところでルールとして書き出していきます。
「どんな行動がよいのか/悪いのか」が具体的に見てわかる、その行動を取っている人だけでなく周りの表情や反応も一緒に見られるため、「なぜなのか」「どんな結果になるのか」を他者の気持ちも含めて考えることができる、という狙いがありました。
その後、班に分かれてもらい、班ごとにプリントを配り、
①メンバーの名前
②今回のルール(穴埋め)
③やる遊び
を書き起こしてもらいます。①で所属意識を持ってもらい、②でルールを再確認(リマインド)し、書き出し口に出すことで定着を図り、③で話し合いを行う、という流れです。
その時の様子が…
手元のプリントに、注目が集まっている様子がわかります。今回、話し合いを回すことはターゲットとしていないため指導員も入りながら、「今は何する時間か」「次は~しよう」等やることを伝えていきます。
手元にルールが書いてあるため、「~君はなにやりたい?」等、まだ意見を伝えてない子に率先して質問をすることができました。難しい場合は、指導員が「~って聞いてごらん」等個別に補助を入れて促しました。
最終的に意見が割れ、やりたい事が選ばれなかったお子様もいましたが、班で決めたものにみんなで最後まで取り組めました。
③結果
「話し合い」というワードは少し堅い印象を与えますが、意見の発信と受信というのは、自分のことだけでなく、その先に相手がいるという「他者意識」を身に着けるということであり、他者とのあらゆるコミュニケーションで必要になる要素です。普段の会話では流れていってしまう事でも、まずは発信する、受信するという「ルール」を作り「ルール通りの行動」を取れるよう環境と補助を出すことが出来るため、「話し合い」はその学びとして有効な課題ではないかと思います。
反省点として、モデリング動画を見せる際、あまり「話し合い」という堅い課題を意識させず「ゲームを決める」という方を強調したため、「その動画のどこに注目するか」が明確ではありませんでした。意図を理解できたお子様もいれば、「会話」という聴覚的な情報よりも、動画の中で指導員たちが用いていた「カードゲーム」という視覚的な情報の方に注意が行ったお子様もいたため、モデリングが全体に効いていたとは言えません。
どういう提示が一番有効なのかは、お子様によって違います。全体提示はもちろん、それぞれのお子様にあった+αの補助が行えるよう、改善を重ねていきます。
またのご利用、ご閲覧お待ちしております♪