ハートリンク放課後等デイサービス本郷台《外出先でのABA実践》
夏休み、一週目が終わりましたね。
つい最近まで今年は冷夏だね、なんて言っていた私。いやいや大ウソ、とんでもなく暑いじゃないですか。
そんな中でも本郷台のみんな、元気にいろんなところに行ってまいりました。大人も一緒になってはしゃいで来ました。まずは外出中の様子をご報告です。
まずは《つくし野フィールドアスレチック》
アスレチックに入る前に、約束のリマインド中。
今回のメインだった水上アスレチック。濡れたくないとは言いつつ、一度濡れたらもう怖いものはありません。びしょ濡れです。みんなも「怖い!」と言いつつ、綱渡りやボートにチャレンジしました。
続いて《江の島水族館》
外のテラスで昼食を取り、イルカショーを見てから班行動で館内を周りました。
《川遊び》にも行きました。
前日が雨だったため、川までの道がだいぶぬかるみヘトヘト…木々が日の光を遮って辺りは暗く、聞こえるのは虫の声だけ。「森が怖い」というお子様もいたのですが、確かに、人の手の加わっていない自然の世界に包まれる機会は少ないかもしれません。本郷台のメンバー以外人に遭遇することもなく、日常とは切り離された神秘的で荘厳な雰囲気に圧倒されました。無事川につき、冷たい水につかって遊んで、ザリガニ釣りにも挑戦。残念ながら釣れませんでしたが、オタマジャクシには出会えました。
最後は《鎌倉散策》
鎌倉八幡宮で参拝、自然を見て回って最後は家から持ってきた500円のお小遣いで、小町通りでお買い物。食べ物に使う子、かわいい小物に使う子、限られたお金で、悩みぬいて使い道を決めました。
さて、こんな感じで、夏休み期間はあちこち行ってみる予定なのですが、「外行って遊んで楽しかったね」で終わるわけにはいきません。楽しい中にも学びを。なんたって本郷台の夏休み、スローガンは『遊んで、学んで、全力全開の夏!』です。
ではどんなことを外出から学べるのか?
今日はそれをテーマにお話しさせていただきます。すでに少々長くなってきていますが、ここからが本題です。もうしばらくお付き合いいただければ幸いです。
以前、ABA(応用行動分析学)という考え方についてお話をしました。
行動の前(きっかけ)と後ろ(結果)を操作することで、いい行動を増やし、不適切な行動を減らすことが出来る
という仕組みを駆け足ではありますがご説明させていただきましたが、「行動」が日常のあらゆる行動を指すのと同様、ABAを実践する場も、決して教室だけではないんです。自宅、車内、公共の場、あらゆる場所で実践が可能です。なので外出イベントは、環境の整えられた教室から飛び出して、自然な日常の場面でABAを用いて支援を行っているということなんです。
この、「強化」と「弱化」を覚えている方はいらっしゃるでしょうか。
行動した⇒いいことがあった!⇒行動が増える!
行動した⇒嫌なことがあった(望んだ結果にならなかった)…⇒行動が減る…
という、誰にでも当てはまるこの仕組み、行動を増やす結果を「強化」、減らす結果を「弱化」と呼びます。そして、これの「操作」と言うのは、いい行動(ターゲット行動)に対しては増えるように「強化」をする、不適切な行動に対しては減るように「弱化」をする、ということを指します。
加えてですが、行動をした人に対して「強化」の結果となる物(ご褒美)のことを「強化子」、「弱化」の結果となる物のことを「弱化子」と呼びます。これもだいぶ前にはなりますが、一度お話をさせていただきましたね。
ターゲット行動を促すために「強化子」を提示するわけですが、強化子がその子にとって的外れであってはいけません。「この課題ができたらみんなで遊べるよ!」と伝えたとして、「みんなで遊ぶ」のために課題を頑張れる子もいれば、「みんなで遊ぶ」には全く興味がなかったり、課題をこなすほどの魅力は感じない、という子もいるはずです。強化子は人によって違いますが、それを得る為ならターゲット行動を取るほどの価値があるものであるということが条件となります。
普段教室で支援をする際は、どうしても教室という限られた空間、大人数の活動という縛りもあり、提示できる強化子は限られてきます。教室内で提示できるものが、本人たちの興味になかなかヒットしない場合もあります。
しかし、それが本人たちの興味であふれた空間ならばどうでしょうか?
強化子がたくさんある、と言うことは、ターゲット行動を取るチャンスもたくさんある、と言う事です。これを利用して外出先での支援を行います。
例を挙げてみます。
江ノ島水族館で指導員1人とお子様3人の班行動を行ったときのお話です。
この班の3人、自分のやりたい事、伝えたい事ならば積極的に伝えてくれるのですが、「相手に話しかける(注目を引く/伝わるように説明する)」「相手の話を受容する(交渉する)」と言うのが難しいという課題が共通していました。なのでターゲットは、全体の約束だった「指導員の指示を聞いて行動する」と同時に「相手に質問をする」「相手の意見を受容する」という部分に定めて進めていきます。
指導員が「何見に行こうか」と聞くと「ペンギンが見たい」と、指導員に対して発言したお子様がいます。自分の見たいものをまず、指導員に伝える事が出来ました。しかし、それを伝えたらもうペンギンの方へ歩き出そうとしたためまずは一度止めて、「それをみんなに伝えてみたら?」と促します。促すことで、「ねえみんな、ペンギンはどう?」と発信することが出来ました。
今度はそれを聞いた側の児童に介入します。他の子は違うものが見たいようで、それをうまく伝えられず困った顔で無返答、という様子が見られます。なので「~っていってるけど、みんなは何が見たいの?」とたずねると「クラゲが見たい」「ペンギンがいい」と表出してくれました。
ここからは指導員がリードを取り、交渉と意見のまとめに入っていきます。
「じゃあ、ペンギン2人いたからまずはペンギン、その後はクラゲ、みんなの見たいものを順番に見ていこう」
これに全員が同意、その後も順番に見たいものを相手に伝え、周ることが出来ました。
ここでのポイントは、「一方的に言っただけでは見たいものが見られない」「班の友達に対して言ったら見たいものが見られる」と言う事です。
どちらの場合も「見たいものを言う」と言う行動は《目的物取得》の行動に当たりますが、「一方的に」だった場合は弱化の結果に、「班のお友達に対して」だった場合は強化の結果となります。
それぞれの興味のある生き物が強化子として大いに機能しているため、「それを見るために相手に伝える」という仕組みが機能したわけです。勇気を出して、後ろを向いている友達の肩を叩いたり、自分の見たいものの前に友達の見たいものを一緒に見に行くことが出来ました。
こうして、江ノ島水族館では魚やショーを楽しみつつ、ABAを用いて「相手に質問をする」「相手の意見を受容する」という学習が行われていたわけです。
こういうと、すごく堅苦しいイメージを持たれるかもしれませんが、楽しむところは全力なので、ご安心ください。
これスタッフが一番楽しんでるんじゃないか…?という場面もちらほらと。
まだまだ続く夏休み、遊んで、学んで、全力全開の夏!外でも中でも、成長と笑顔で盛りだくさんになればいいなあと、スタッフ一同皆さんをお待ちしております。