ハートリンク放課後等デイサービス本郷台《ゲーム大会》

蒸し暑い日が続くようになってまいりました。6月も間もなく終わり、とうとう夏本番、夏休みももうすぐそこです。

本郷台のみんなも、気が付けばプールの授業が始まったご様子。プールの授業の後の算数、国語、あれほどつらいものは小学校6年間の記憶を可能な限り探っても、なかなか見当たらない気がします。プールの後は、教室の窓から差し込んでくる日差しが暑い、というより暖かく感じてふわふわと眠気が襲ってくる。私だけかもしれませんが、教室にみんなが持ってくるプールバッグを見ると、冷たくて気持ちのいい水の感触より、あの時の眠たさの方を先に思い出してしまいます。

 

さて、本日のお話は、そんな夏の活発な運動とはだいぶ変わりますが、先日水曜日、《SST》の日に、二週に分けて実施した「ゲーム大会」についてのご報告です。いくつかの班に分けチーム戦とし、一週目は準備の日として、それぞれのチームでの話し合いと練習、二週目は本番を行いましたので、①狙いと課題設定②話し合いへの取り組みの様子③ゲーム大会の結果、の三つに分けて、今回もお伝えさせていただければと思います。

 

①狙いと課題設定

前回のお話でも書かせていただきました。月曜日と水曜日は《SST》を狙いとしており、さらにその中でも水曜日は《意見の受信と発信/気持ちの表出》をターゲットとしています。

今回のゲーム大会も、水曜日。一番重要視したい狙いは一週目の「話し合い」でした。二週目のゲーム大会は、話し合いのテーマという要素も大きいですが、水曜日のターゲットのもう一方、「気持ちの表出」として、感想をみんなに発表してもらおう、というのが狙いです。

「話し合い」といっても、完ぺきにこなそうとすると必要なスキルも多く、さらにその中でも狙いを絞る必要があります。これについては前回も取り上げたので、そちらのブログも見ていただければと思います。今回も、あくまで話し合いを、「お互いの意見の受信・発信」の場として利用することにしました。

話し合うのは①チーム名②誰がどのゲームに出るか、ということです。「~は何がいい?」と相手に質問をすること、また、質問をされたら「~がいい」の形で返すことをルールとしました。「質問をする/される」という点でどちらも他者認識につながり、「やりたいものを伝える」という点で意見の発信になり、「相手の話を聞いて書き込む・交渉をする」という点で意見の受信が必要になります。

ではどんなゲームにしましょう?

色々、集団遊びや競争の案が出たのですが、先ほどもお伝えした通り、今回のゲーム大会、狙いとしているのは「話し合い」であって、ゲーム大会はいわば、話し合いを行うための手段です。なので、ゲーム自体にルールが複数あり、それを理解することが難しくなって、「ゲームが分からないからどれにも参加したくない」といった状態になっては意味がありません。そこで、ゲーム自体は「最後まで~してた人が勝ち」「一番~だった人が勝ち」という、目に見えて勝敗が分かり、ルール自体もシンプルなものにすることにしました。

ゲーム①グラグラゲーム(1班1~2名)⇒片足でバランスを取り、最後まで生き残ってた人の勝ち

ゲーム②協力ゲーム(1班2名)⇒2人が背中合わせに体育座りし、両腕をお互いに組んだ状態から、一番初めに立ち上がった人の勝ち

ゲーム③しっぽとりゲーム(全員)⇒最後までしっぽを付けていた人の勝ち

以上3つをゲーム大会の内容とし、3~4名の班に分けて、話し合いを実施します。

 

②取り組みの様子

まず、一週目は話し合いが主となるのですが、前回同様そこ来週ゲーム大会をやる、ということを強調して話し合いと言う難しく落ち着いて取り組まなければいけない活動に対しての「つまらなそう」「難しそう」という意識を逸らしていきます。それぞれのゲームを実際にやって見せ、モデリングしながら説明し、一つ目のゲームは感覚が必要だよ、ということ、二つ目のゲームは、「せーの」の掛け声や協力することが大切だということを班に分かれたら練習もしてみて自分の得意不得意を考えていい、ということにしました。

前回、話し合いの課題に対し、同様に「話し合い」から意識をそらせるため、ゲーム性を強調しすぎてしまい、本当に気付いてほしい約束とその理由を見せるためのモデリング動画がうまく入らなかった、という失敗があったため、今回のルールは、動画ではなく、紙にイラストとセリフで「(名前)さんはなにやりたい?」⇒「~がやりたい」というやり取りを描き、これを伝える事、と簡単に提示をして各班の机の上に一枚ずつ置きました。発信と受信を促すためのテンプレートと言う《視覚補助》になります。

班分けは、事前に指導員が行いました。話し合いの流れとして①チーム名②誰がどのゲームにでるのか、を決めることは変わりませんが、スキルが近いお子様同士で班になってそれぞれの班に一人ずつ指導員が付きます。班によって指導員の役目が変わるので、どんな介入をしていったのか、お伝えします。

例えば、決めるべき内容と、ルールとして挙げた質問の仕方を分かっていて、それに沿って取り組むことが出来るお子様たち。指導員は部分的に伝え方を教えたり、交渉案として中間の取り方を伝えたり、次の指示を出していきます。

自分のやりたいことは分かるが、相手に問いかける、ということが難しいお子様たち。指導員が話し合いの書記のような係となり、机の上に置かれた《視覚補助》のテンプレートも用いながら「誰が誰に何と質問するのか」といった、ルール通りのやり取りができるよう促し、まずは「聞く(受信)」「答える(発信)」の部分に注目をしてみていきます。そのため、「意見を一つにまとめる(交渉する)」部分は指導員がリードをするということもあります。

ルールや指示、質問の理解が難しいお子様たち。「話し合う」からレベルを下げ、「指導員の質問に対して答える(意思を表出する)」ことを狙いにして、指導員主体でそれぞれに質問をしていきます。また、ゲームの内容を理解してもらうため、少人数の場で実際に体験しながら練習をしました。

 

 

さて、想像してみてください。口頭の説明だけではルールが入らなかったお子様に対し、「片足立ちで長く立っていられた方が勝ち」というゲーム、皆さんならどうやってルールを説明しますか?

今回私たちが取った方法は、まず指導員と向かい合わせに立ってもらうため、足元にテープを貼り、指導員とお子様の立ち位置を決めます。向かい合わせになったところで「バンザイ」をモデリング。そのまま真似をしてもらったら片足も上げる。そして、どちらかがふらついて足を着いたタイミングで、「足着いた、~の勝ち!~の負け!」と、「なぜ」「どちらが」勝ったのかを伝えます。そしてまたすぐにモデリング⇒勝敗を伝える、を繰り返し、ゲームとその勝敗条件を定着させました。あまり一回の勝負に時間がかかると飽きてしまう、忘れてしまう可能性があるため、指導員はあくまでルールを教えるための時間として、足を着くタイミングを調整してテンポよく進めます。

短時間で繰り返すことで、最後はルールを理解しお子様の方から「ぼくの勝ち」と表出してもらうことができました。

 

③ゲーム大会の結果

話し合いの時間は、それぞれのテーブルごとにどこまで子供たちで決められたか、という部分は違いますが、質問と返答のルールを守りながら、取り組むことが出来ました。練習の時間には、片足で何秒立っていられるか班のメンバー同士で自主的にタイマーを用いて本番を想定した競争を行ったり、腕を組んで立ち上がるゲームでは班の中でペアを変え、一番立ちやすい組み合わせを探す様子が見られました。

ゲーム大会当日、あまりコンディションの良くないお子様もいて、集団活動として「座って話を聞く」が難しい様子がありました。なので予定変更、ぐらぐらゲームとしっぽ取りゲームのみ実施することにしました。

負けることに不安を感じ泣き出しそうだったお子様に対し、同じ班のお子様が「俺がいるから大丈夫だよ」と声をかける場面に、指導員、感動でもらい泣き寸前…。

絶対に想定通りに行く、ということはなかなかないのですが、その日の状況により、何を取るか、どう変えるか、最優先するべきことは何かを判断することも重要になってきます。二週に渡り継続した活動を行う事の難しさを、指導員も学びました。複数回継続することのメリットも多々ありますが、デメリットやレベル感とも調整しながら今後の活動も計画を行ってまいります。